toriomamaの野望

toriomamaの野望

パラソル

私はゆっくりと歩き出した。病気といっても体ではなく心の病・・・

あれから1週間がたった。
夜眠ると悪夢に襲われる。

ずいぶん遅くなったので私はそっと玄関に入り、母の様子を見ようとリビングのドアを開けた。そこには、壁に赤いものが飛び散って机の上にある灰皿が落ちキャビネットの花瓶や電話が散らばっている。
私の心臓が脈打つ。
(いったい何が、おこっているの)
ゆっくりとキッチンのほうをみた。

(まさか・・まさか・・・)
頭の中で私の声が響く。

キッチンの端に足が見える。誰かが倒れている。見覚えのあるスリッパ。
ゆっくりと回りこむとそこにはうつぶせに倒れている母頼子がいた。
そしてその背中には包丁が刺さって白いブラウスを真っ赤に染めている。
(ありえない・・ありえない)
頭の中で呟いている。
「きゅ・・救急車!」
わたしは呟くとポケットから携帯を取り出すと119番を押した。
「カチャ」その時廊下のほうで物音がした。
(誰かいる。犯人?)
とっさに私はキッチンの奥の棚の陰に身を隠した。
「まったく・・」明らかに聞いたことのない声がしてリビングに誰かが入ってくる気配がした。
「パラソルはどこにあるんだ」
その男はつぶやいた。



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